子育て総力戦研究所

父親から見た23区近郊車なし子育て

中野区で保活をする話(その1)

記事の構成

 保育園探し(保活)関連の記事については、内容が多いので、その1でそもそもの制度的な建てつけと考え方を、その2で実際の保育園探しに関する話を書きたいと思います。※内容はフルタイム共働き世帯を前提としています。

保活の大前提となる考え方(育休との関係)

 休業制度等福利厚生については会社により異なりますが、一般的な会社では「育児・介護休業法」の規定に則り、基本的には子が1歳になるまでは育児休業が可能で、競争倍率が高く保育園に入れなかった場合、半年おきに2歳になるまで延長可能、というのが原則になると思います。これは給料が無給になる代わりに支給される育休給付金の支給スケジュールとも一致しています。

 そのうえで、乳児を保育園へ預けられるのは、最短で生後57日以降ということになっています。これは、産後休暇が生後8週間(56日)しか取得できないため、産休明けですぐ復帰する場合、57日目から保育園に入れる、という運用思想のようです。

 ただし、生後57日目の赤ちゃんはまだ首も座っておらず、生活周期も不安定であることから、実際にこのような運用をする人は稀で、一番早い人ですら生後3~4か月程度まで育休を取り、そのあと保育園に入れて復帰。あるいは祖父母等の身内に見てもらいつつ産休明けから復帰するといったパターンになるかと思います。

保活の大前提となる考え方(保育園の種類)

 保育園は大きく分けて公立園・認可園とそれ以外に分かれます。「認可園」とは、行政からの補助金がほぼ全額出ている園で、施設・人員配置等のサービス水準を公立園並みに満たしている必要があります。他方、保育料は統一されており、入園調整についても公立園と併せて行政が一括して行っており、実質的に行政サービスとして保育が提供されている園になります。
 「それ以外」はいわゆる「認可外園」ですが、行政の求める水準を満たす必要もなく、保育料の統制も受けないという、完全にビジネスとして保育が提供されているものになります。なお、東京都では、認可外園のうち、一定の水準を満たすものに認証を出して「認証園」としていますが、保育行政上、認可園とは全く別の建てつけとなっています。
 認可外園は保育の水準が低い割に保育料が高い等、長期間保育を委託するには向いていないため、「保活」の最終目標は公立園・認可園になることが多く、以下でも公立園・認可園への入園に関して記載しています。

保活の大前提となる考え方(保育園の募集の仕組み)

 保育園の募集については、0歳児クラス6人、1歳児クラス12人…といったように園の面積や人員配置から月齢ごとの定員が厳しく決まっています。ここで注意が必要なのは、どのクラスに入園するのかは4月1日時点の月齢で決まり、かつ進級(クラスの持ち上がり)は4月1日に行われるということです。

 進級が4月1日に行われるということは、前の年度の在籍数にかかわらず0歳児クラスの枠が一気に空くということであり、基本的にこのタイミングで全定員の募集がかけられます。もちろん1歳児クラスの空き定員分についても同様です。

 こうした仕組みのため、保育園への入園は基本的には毎年4月の入園が最も容易であり、もしその保育園の定員が4月に埋まってしまった場合、引っ越し等により定員に穴が空かない限り、翌年の4月まで新規で入れないということになってしまいます。

 なお、中野区では、区内の公立園・認可園について募集をとりまとめており、入園希望者は希望する園を複数書いて申し込み、区の利用調整の結果を待つ仕組みとなっています。

育休の考え方と保育園の募集方法が組み合わさるとどうなるか

 育休の区切りは生後○年・○か月といった出生タイミングからの相対スケジュールなのに対し、保育園の募集の太宗は毎年4月という絶対スケジュールであるため、下記のように生まれる時期によって取れる手段が変わってきます。

 赤ちゃんが4月~12月生まれ → 次の4月時点では0歳4か月~11か月のため、このタイミングで保育園(0歳児クラス)に入れることが可能です。
 赤ちゃんが1~3月生まれ → 4月時点ではまだ0歳1~3か月のため、保育園(0歳児クラス)に入れるのが困難です。だからといって、翌年の4月を待つと、1歳児クラスでの入園になります。

1歳児クラス激戦区問題

 上記のような事情に加えて、いつ生まれだとしても育休を1年フルに取った場合は1歳児クラス入園になることから、現在は0歳児クラス入園ではなく1歳児クラス入園の方が応募人数が多い状況となっているそうです。(中野区の資料を見るとおよそ1.5~2倍程度)

 他方、保育園の定員は、一見1歳児クラスの方が多いのですが、0歳児クラスからの持ち上がりで半数程度は埋まってしまうため、0歳児クラスの募集と1歳児クラスの募集人数はほぼ同数あるいは1歳児クラスの方が少ない、という状況になっています。
 (区立園だけで計上すると、0歳児クラス89名に対し、1歳児クラス63名)

 こうしたことから、中野区の担当者に話を聞いたところ、現在は、0歳児クラスの4月入園であれば、希望園を5~10か所書けば、まずどこかには通るものの、1歳児クラスの入園は逼迫しており、待機児童を生む主因となっているとのことでした。このことは、中野区の2023年4月入園の2次募集の資料において0歳児クラスの募集枠がかなり余っていることからもわかります。

そういった事情の結果

 早生まれの場合、保育園に入れるのが始まる前からハードモードになります。また、育児休業を給付金が支給される1年間フルで取った場合でも、そのあとの出口戦略が厳しくなる、というような状況になっています。

会社の制度・運用上、育休がとても長く取れる場合

 我が家の勤務先では、数少ない恵まれた福利厚生として育休が最大3年取得可能です。もちろん、育休給付金は原則1歳まで・保育園に入れない場合最長2歳までなので無給期間があるのですが、保活が激戦の1~2歳児期間をパスして子どもを3歳から幼稚園に入れるというルートもできるため、保活事情はかなり緩和されます。
 ただし、育休を取ることにより、育休中世帯年収が低下する、復帰後の昇進・昇給が遅れる、キャリア形成上不利になる、母親が育児以外のコミュニティを持ちづらいといったデメリットも存在するため、3年取得しないケースも考えられます
 このような事情から、育休が長く取れる場合は、生まれた後の4月から0歳児クラスに入れるor3歳まで保育園に預けないという両極端な選択が現実的となっています。

 ※無意識に母親が育休を長くとる前提となっていますが、給与や勤務環境が同等または母側優位であれば父親側が積極的に取るべきかと思っています。

 なお、親の職場復帰という観点を除外して保育園に預けるメリデメを検討すると、メリットとしては子が早くから同世代の社会に組み込まれることによる発達面での良い影響、感染病をもらいやすいことによる免疫の付きやすさ、親が育児から解放されることによる育児負荷の軽減保育園ならではの活動、地域の親コミュニティに組み込まれる等が挙げられます。他方、デメリットとしては、親子が一緒にいる時間が減ること、保育園で病気をもらってくることが多いといわれており仕事との両立がかなりハードワークとなること、保育料がかかること等が考えられます。

さらに片方が転勤族の場合

 以上のような0歳や1歳で保育園に入れるというのが、その後4~5年は夫婦ともに同じ勤務地であり続けるということを暗黙の前提としており、もし転勤ペースがそれよりも短かった場合、保活は無茶苦茶になります。

 仮に育休を切り上げて保育園に入れたとしても、その後の転勤に帯同できるのか、帯同した先で保育園に入れるのか、帯同しない・できないとすればワンオペで仕事・育児はできるのか、といった難題が待っています。このように、フルタイム共働きで片方が転勤族だった場合、子育ての予見可能性にかなりの困難が伴ってしまいます。

 とはいえ、転勤するかどうかが早めにわかる仕組みでもないので、とりあえず中野区内で保活の準備を進めて、もし転勤が濃厚となった場合は入園辞退・育休期間については転勤先で考えるという方針で進めることになりました。

 次の記事は実際に中野区で保活を行ったレポになります。

 

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