子育て総力戦研究所

父親から見た23区近郊車なし子育て

中野区で保活をする話(余談)

保活その1・その2の記事で書ききれなかった余談(チラシの裏)をつらつらとまとめています。

区立園・元区立園の立地について

 せっかく手元にデータがあるので、区立園・元区立園=駅から遠い説を検証してみました。下図の赤丸が区立園、緑丸が元区立園ですが、沼袋保育園(沼袋)や中野保育園(中野新橋)、あけぼの保育園(新井薬師前)、令和6年3月で移転する陽だまりの丘保育園分園(東中野)を除くと駅からまあまあの距離にあることがわかります。

区立園・元区立園の配置

区立園・元区立園の利用調整の下限点数について

 こちらも、底点が低下した2023年度のデータで調べると、0歳児クラスの募集がある区立園・元区立園31園のうち、38%にあたる12園が42点となっていました。
 一方、その他民営園46園のうち、21%にあたる10園が42点となっていたため、区立園並みの敷地をもっているかどうかは人気倍率の有意な差に繋がっていると思われます。

幼保一元化について

 文科省所掌の幼稚園と厚労省所掌の保育園の一元化を目指して「こども園」制度ができましたが、少なくとも中野区内では一元化は進んでいないです。これに限っては完全に政府施策が中途半端であることが主因じゃないでしょうか。今後全産業において人手不足が深刻化するのですから、許認可権限にこだわってないで、将来的には保育士・幼稚園教諭資格の統合(通常の資格にありがちな1級・2級等の二段階化でも良い)も見据えて保育・幼児教育リソースを一元的に管理・運用すべきだと思います。

保育料の計算と就労意欲について

 4月入園と仮定すると、4月からの保育料の算定基準は前年7月から翌6月までの世帯単位での住民税の課税額 = 一昨年の両親の所得(就労状況)に応じた金額となります。

 このため、産休・育休によって世帯年収は減少しているにもかかわらず、減少前の所得に応じた保育料が4か月間はかかる他、育休中は社会保険料等が免除となり、育休給付金も非課税であるため、我が家のケースでは、保育園を利用して時短勤務等で復職するのと育休を続けるのでは、最初のうちは手取りがほとんど変わらないという計算結果になりました。

 保育料や育休給付金が育休前のフルタイム勤務時代の所得を参照しているために発生する制度のバグのような結果ですが、実際のところは、より価値観ベースで仕事がしたいか子どもを育てたいかという選択を(経済的な損得に拠らず)ニュートラルに判断させてくれるような制度になっているのではないでしょうか。

 最も経済的なのは、1年半ほど育児をした後、保育料の算定が更新される9月から1歳児クラスに入園させることですが、(その1)の記事で書いたように年度途中での入園は厳しく、現実には0歳児クラスに預けるか、育休をギリギリまで延長するかという極端な2択となります

定員の偏在/隠れ待機児童について

 (その2)の記事で書いたように、都市部においては自宅からあまりに離れた保育園に通わせるのが困難ですから、保育園の需要と供給は地理的になるべく一致している必要があります。しかし、実際には特定の地域においてマンションが一気に建設される等で需給が歪むようなことが多々あり、市区町村内で定員と入園希望者数が均衡したとしても、空間的に需給が偏っていたら待機児童が発生することになります。このことは月齢別の定員の設定にもいえます。都市部で新たに保育園を開設できる場所は限られていることから、保育サービスをうまく需要に合わせて供給できないのは、需要側の要求の細かさ及び増減の速さに供給側が対応できないことに主因があると考えています。これはひとつひとつの事業者がどうこうできる話ではなく、都市計画レベルの問題ですが。

 また、保育園に入りづらいからこそ育休を延長している人や、就労を制限している人、つまるところ潜在的な利用者層はかなりいると考えられ、ある意味では供給すればするほど需要が追い付いてくるような気もしており、保育園の適正な供給量というものを事前に設定することが困難なのではないでしょうか。結果的に全員が多数の園を書かなくても希望している園に入れ、いつでも転園したりできるという状態になって初めて十分な供給量といえると思います。

保活にガチる場合のテクニック

 早生まれ等で0歳児クラスに入れないけど、1歳児クラス4月募集になんとしてでも受かる必要がある、という人はフルタイム共働き勤務による基礎点の42点からさらに上乗せする必要があります。

 都内の保活の文脈でしばしば語られるのは、認可外の保育園を一時的に利用することで保育の必要性をアピールするということで、中野区の利用調整上では3か月以上預けてつつ仕事に復帰することを条件として1点、6か月以上預けながら仕事に復帰することを条件として2点が加算されます。

 中野区内の保育園の1歳児クラス4月募集の2023年実績を見ると、ほぼ42点で揃っていますが、稀に43点や44点の保育園があり、こうしたところはひとり親による加算あるいはこうした努力によって底上げされた人しか入れないということになり、いまだ残る保活戦争の苛烈さを垣間見ることができます。

保育士の待遇改善について

 保育士の待遇改善を進める必要があるという総論には同意しますが、そもそも家庭での保育を前提としてそれを外部化している背景上、あまりにも子ども一人当たりに付く大人の数が少ないと、実際問題として保育園に預けることで外で働けるようになる大人の数と保育園で働いている大人の数の差し引きが0に近くなり、労働力を確保する名目で公的予算を投入する必要性が薄れてしまうという問題を抱えています。

 また、保育にかかる費用を厚くすればするほど、そのコストは保育料と現役世代が中心に負担する税や保険料から賄われている都合上、さらに現役世代の経済的困窮・ひいては少子化が進むというジレンマもあります。

 こうしたことから、(子ども一人当たりの)保育に係る経費を増やせば増やすほど、結果的に保育を利用できる人間が減少してしまうという難しい状態に陥ります。

 育児を外部化するだけでも保育園整備費など追加的な経費がかかるわけですから、育児中の給付保障を拡充し(それまでの稼ぎの額に関わらず定額保障する等)、その枠内でなるべく自助・共助で育児をしてもらい、それ以上に稼ぎたい親がいれば保育水準も保育士の待遇も高い保育園を利用するというような仕組みとなった方がお互いに良いのかもしれません。既存園のスクビルを伴うのと所得・生活費用の地域差もあるので制度設計がかなり困難だとは思いますが…